花冷え



   咲いてる時間が いつもあわただしいから
   想い出させる ひとの苦しみも 少なくてすむのだけど
   今年は花冷え
   いつまでも咲いてる いつまでも散らない
   この花は ぼくに思い出させる
   ぼくにとって 一番つらい場面を
   この花は ぼくを責めつづける
   ぼくがきみにした 一番ひどい仕打ちを
   今年はいつまでも 花びらが散らない・・・
   つみかさねたはずの 楽しい記憶は
   むごい白さの中に かすんで見えない
   君のやさしい 春のほほえみさえ薄れ
   あの日の 静寂の怨嗟だけが残る
   酔いに逃げ込めば きみがたたずむ
   二度とあやまちを償えぬ あの彼岸のどこかで
   きみ咲く きみは今年もさく
   最後の愛すら 信じようとしなかった男を
   今年もまた 魂のない目でみとりながら
   凍えた花・・・



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