ほんとうに好きだったのは

   どうして、君を選ばなかったのか
  どうして あの時電話かけ直さなかったのか
   むごい十代
  今 初めての出会いなら
  よそみなんかしなかったのに・・・
  
  あれから何年ぶり
  お互いいわゆる社会人
  誰かのまねした化粧しなくても
  ブランドマークを体にはべらせなくても
  君は
  君だけの魅力を手にいれた
  決して派手ではないけれど
  十年後にも色あせることはないと
  確信できるやさしさと美しさにあふれて

  5月の夕立ちあけのように さわやかな笑みが
  ぼくからとうに卒業したことを告げている

  もっと いい女にめぐり合えると思っていた
  うぬぼれ うぬぼれ屋

    あの娘 もう名前さえ思い出せないよ
  でも 君は覚えているんだろうね
  
  知ってる?
  紫陽花って ほんとは花じゃないのよ
  あなたは好き?
  よそみしかけてるのをたぶん知ってて
  話しかけた あれは何度目のデートの時
  なんて答えたのか忘れた
  あのあと雨が降りだしたね

  君は紫陽花のようなひと
  木もれ陽のなか ひっっそりと
  決してあでやかではないけれど
  どんな雨にたたきつけられても
  魅力のかわらないひと
  桜のように
  一度きりの雨で 消えたりしないひと
  
  あの娘とは二度きり
  でも君は信じようとしないだろうね
  
  彼女 ずっと電話待ってたのにって
  あとで 君の友達から聞いた
  どうして あの時・・・

  今だからわかる
  だから言えない
  ほんとうに好きだったのは 
               

 


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